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パリ2024オリンピックレスリング金メダリスト 藤波朱理選手インタビュー!

パリ2024オリンピックでレスリング競技は男女合わせて8個の金メダルを獲得する大活躍でした。その中でも“大本命”の期待を背負いながら、圧倒的な強さを見せて女子53㎏級を制した藤波朱理選手に、初めてのオリンピックのこと、レスリングのこと、そしてこれからのことをうかがいました。

■オリンピックでしか味わえない瞬間を もう一度味わいたいと強く思った

――少し時間が経ちましたが、初めてのオリンピックを戦ってみての感想を聞かせてください。

 

自分が想像していたキラキラしたオリンピックという舞台は、想像以上でした。

大会前の雰囲気も試合の環境も、他の大会とは違うなと思いましたし、実際に自分が出場したことで、よりオリンピックの価値というものを感じた大会になったと思います。

 

――試合の緊張感は世界選手権や他の大会とは違いましたか?

 

緊張感は他の大会よりもありませんでした。

今までオリンピックという舞台のためにレスリングをやってきたので、せっかくなら楽しみたいと思っていたんです。そういう意味でオリンピックは唯一「楽しもう」と思って挑んだ大会でした。

――オリンピック前に肘をケガして手術をしましたが、大会に向けて不安はなかったのですか?

 

ケガをした直後はオリンピックに間に合うかどうかもわからないギリギリのラインだったので、落ち込んだ時もありました。でも、周りの方の協力もあって、ケガをどうプラスにするかを考えるようになりました。

3月にケガして手術をして、2カ月は練習ができなかったので急ピッチで仕上げたんですけど、肘をケガしたおかげで下半身の強化ができましたし、プラスの面もありました。ケガがあったからこそ、金メダルがより輝いたなと思っています。

 

――試合で一番印象に残っていることは?

 

試合は鮮明に覚えているのですが、すごく昔のことのように感じます。夢のような時間だったというか、あの空間、あの瞬間は、4年に一度のオリンピックでしか味わえないものだと思いましたし、また味わってみたいと強く思いました。

試合以外の部分でも、すべてが初めての経験でずっと楽しみにしていたことだったので、印象に残っていることはたくさんあります。試合が終わった後のチャンピオンズパーク(パリ2024オリンピックで新設された、メダリストの祝賀イベントなどファンとの交流が行われるゾーン)の経験は一生忘れないと思いますし、全部がキラキラした思い出です。試合だけではなくて全部がオリンピックなんだなと感じました。

――目標のオリンピック金メダルにたどり着いて終わりではなく、「もう一度」という気持ちが大きくなったのですね。

 

そうです。オリンピックの後、2カ月くらい休養をしていたのですが、レスリングから離れて1カ月くらい経った時から、毎日が楽しくないと感じるようになったんです。練習がないので夜更かしできたり、好きなものを食べたりしていても、その生活が幸せではなくなってきたので、やっぱりレスリングをやって、目標に向かって頑張るのが自分にとって一番の幸せなんだなっていうことに気づけました。

 

――オリンピックでも優勝してさらに連勝記録が伸びましたが、ここまで勝ち続けられる秘訣は?

 

勝ち続けるという意識は自分の中ではなくて、常に自分のレスリングを進化させ続けるという意識でいることが、結果的に連勝につながっているのかなと思います。その気持ちは変えずにやっていきたいです。

■オリンピックチャンピオンとして 面白いレスリングを見せていきたい

――今でこそトップ選手の藤波選手ですが、本格的にオリンピックを目指そうと思ったきっかけは?

 

小さい時から同じ場所で練習している人たちが世界の大会で戦っていた影響もあります。

あとは中学生の時に見たリオデジャネイロ2016オリンピックの記憶が今でもしっかりあって、心が鳴る感覚を覚えていて、「自分もこうなりたい」と思ってから、オリンピックを本格的に意識するようになりました。

 

――幼少の頃から取り組んできたレスリングの魅力はどんなところだと思いますか?

 

レスリングに限らず、スポーツ全般に言えることなのかもしれませんが、ゴールがない、100点満点がないということですね。レスリングは他の競技と比べると、使う道具もなければ、つかむところもない、人と人との戦いなので、本当の強さが競われる競技なのかなと思っています。

 

――試合に向けてメンタル、コンディション作りで意識しているルーティンは何かありますか?

 

試合の時は普段と環境が変わったり、国が変わったりするんですけど、なるべく普段と変わらない時間を過ごすことを意識しています。

必ず持っていくのは「飲むあんこ」や前日に食べる赤飯、あとはお部屋の匂いにこだわりがあるのでお香ですね。

そんなふうに普段と変わらない空間を作っています。食べ物に関してはちょっと違って、遠征の時は日本食を持っていく人も多いんですけど、自分の場合はできるだけ現地のものを食べるようにしています。

――普段の練習や生活サイクルはどのような感じなのですか?

 

今は春休みで授業がないので、朝起きてご飯を食べて、2時間くらいのマット練習です。その後シャワーを浴びて昼ご飯を食べて少しお昼寝をして、午後からはウエイトトレーニングやランニングをしています。練習の後は少し時間があるのでご飯を食べて、サウナに行ったりしています。

授業がある時はなかなか時間がないので、今は友達とカラオケに行くこともあります。時間がある春休みは好きですね。

 

――今回インタビューを掲載するSPOPITAは、スポーツと人をつなぐサイトです。「スポーツ施設検索」「SPOピタっと診断」などのコンテンツがあります。

 

普段あまり運動しない方は、ちょっと体を動かしたいけど何をしたらいいんだろう?ってわからないことが多いと思うんです。でも、この「SPOピタっと診断」をやることで、自分にはこのスポーツが合っているのかなと思って、一歩踏み出す勇気をもらえるきっかけになるかもしれないですね。自分は「競技スキル向上タイプ」と診断されて、陸上や柔道、相撲、スポーツクライミングとかが出てきました。個人競技系が多くて結構的確な印象を受けました。

 

――見るスポーツという部分では、レスリングはどんなところを注目して見たら面白いでしょうか?

 

一人ひとりレスリングスタイルが全然違うので、その違いを見るのも面白いところだと思います。

道具を使わない分、本当にコンマ何秒の駆け引きだったり、数センチの駆け引きだったりがあるので、そこを楽しんでもらえたらいいなと思います。ルールは難しいので覚えなくてもいいです(笑)。

――オリンピックチャンピオンとして、レスリングの普及という面で考えることはありますか?

 

勝つレスリング、強いレスリングというのはこれからも目指していくところですが、オリンピックチャンピオンとして、面白いレスリングを見せていきたいと思います。レスリングを普及させるためにも展開のあるレスリングをしないといけないなと思います。

 

――子どもにレスリングを習わせたいと考えているお父さん、お母さんへのアドバイスをお願いします。

 

小さい頃にレスリングを習うことは、マット運動だったり、飛んだり跳ねたりもあって、全身運動なので成長にとってすごく良いと思っています。ずっと続けてもらうのが一番ですけど、もしもレスリングを辞めて他のスポーツをすることになっても、メリットが大きいと思います。

 

――では最後にこの先の目標をお願いします。

 

2024年の自分を超えるレスリングをしたいと思っていますし、大会で言うと、今一番目標としているのは2026年に愛知・名古屋で行われるアジア競技大会です。その後にはロサンゼルス2028オリンピックでの2連覇につながってくるのかなと思うので、まずは2026年のアジア競技大会で優勝したいです。

【プロフィール】

藤波 朱理(ふじなみ あかり)選手

2003年11月11日生まれ、三重県出身。父、兄の影響で4歳からレスリングを始める。2020年の全日本選手権では初出場初優勝を飾る。2021年に世界選手権に初出場して初優勝。中学2年生の時から連勝を積み重ね、パリ2024オリンピックでは女子レスリング53㎏級で念願の金メダルを獲得した。

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