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パリ2024オリンピック柔道金メダリスト 角田夏実選手インタビュー!

パリ2024オリンピック柔道女子48㎏級で金メダルを獲得した角田夏実選手。

オリンピック後はメディアにも数多く出演し、柔道の普及・発展に尽力しています。そんな角田選手にオリンピックを振り返ってもらいつつ、スポーツ(柔道)に取り組むことの魅力や、競技普及について考えていることをうかがいました。

■決勝戦、巴投、減量…  パリ2024オリンピックのエピソード

――初めてのオリンピックはどんな舞台でしたか?

 

今まで経験した大会では味わえないような舞台だったなと感じています。試合の時は平常心、普段通りに、と意識しながら臨んでいたのですが、終わってみるとオリンピックの影響力の大きさを感じていますし、すごい舞台で試合ができたんだなと思っています。

――決勝戦の最後はすごく慎重になったそうですね。

 

そうですね。世界選手権の決勝戦は、全部自分の責任だと思っていて、思い切り戦って負けたとしても、その時はその時という感覚で、一本を取りにいく楽しさもありました。でも、オリンピックは、いい意味で自分一人の戦いではないというか、自分の責任だけでは終われないという気持ちでした。自分が楽しく柔道をして負けてしまった…では許されないと言いますか、最後は何が何でも勝ち切るという気持ちで、守りに入るような自分らしくない試合になってしまいました。

――それだけ大きな舞台だったのですね。

 

はい。なので、 嬉しいよりもホッとした気持ちが大きかったです。

――オリンピックの影響力の大きさというのは、どんな部分で感じることがありますか?

 

本当にたくさんの人が見てくれていたのだなと感じています。今はたくさんメディアに出させてもらっていますし、柔道教室に参加すると、たくさんの人が私のことを知ってくれているんです。テレビやYouTubeを見てくれて普段の私の感じも知ってくれているので、すごく話しやすくなりました。

――以前は52㎏級だった角田選手は毎回厳しい減量をして試合に臨んでいますが、どのような調整をするのですか?

 

減量期間はだいたい4週間くらいです。ずっと我慢するというよりは、自分の中では5日間頑張ったら2日間食べたり休んだりできる日をつくって、リラックスをしっかりしながらオンオフを決めてやるようにしていました。

――経験を重ねて現在は調整法も確立されているのですね。

 

最初は探り探りでした。私の場合、体的にここまで落ちたら一度増やしてあげないと体重が落ちにくいということもわかってきて、いわゆる“チートデー”を設けることもあります。

――減量中に体重を戻すのは怖くないですか?

 

最初は怖くて戻せなかったのですが、減らすことばかり考えていると、逆に筋肉も落ちてしまって、試合の日にも体重が戻らなくて、結局ヘロヘロのまま試合をしたこともありました。そういう経験もあって、減量の仕方、リカバリーの仕方も自分なりのやり方を確立できたことも金メダルにつながったと思います。

――オリンピックでは角田選手の巴投が注目を集めました。角田選手にとって巴投とはどんな存在なのでしょうか?

 

巴投があるから私の柔道が成立するというくらい、素晴らしい技だなと思っています。捨身技ということから最初はあまり注目されていなかったのですが、皆さんに素晴らしさを知ってもらえたのが嬉しいです。

――頼れる武器なのですね。

 

はい。困ったら巴投です。でも、たまに巴投も機嫌が悪い時があるんですよ。

――巴投に機嫌があるんですか?

 

そうなんです。全然かからない時もあって、一回かからなくなると1カ月くらいかからない場合もあります。そういう時は初めての相手でも、何度も対戦している相手でも、かからないんです。本当にかからない時は誰にかけてもかかりません。

――自然と再びかかるようになるんですか?

 

自分でも明確ではないのですが、何かをきっかけにまたかかるようになります。だからまだ改良の余地はありますね。

――オリンピックで金メダルを獲った角田選手ですが、中学、高校時代には全国タイトルを獲得していません。そうしたなかで、オリンピックを目指すようになったきっかけは?

 

本気でオリンピックを意識したのは世界大会に出るようになってからです。最初に世界選手権に出た時(2017年)、一緒に出場した志々目愛選手は雲の上の存在だと思っていて、同じ舞台に立てるだけで嬉しかったんです。でも何度も戦うようになって、勝つこともできて、これは自分もオリンピックを目指せるのではないかと思うようになりました。

――段階を踏んで少しずついけるのではないかという気持ちが大きくなったのですね。

 

そうです。だから東京2020オリンピックに出場できないとなった時も、「次はパリだ」とはならなくて、1年、1年、一つずつという気持ちでした。負けたら引退しようかなという感じで、目の前にある試合は勝ちたいと思って戦ってきて、気づいたらパリに届いたという感じでしたね。

■柔道で気持ちが強くなった 柔道を見てくれる人が増えたら嬉しい

――柔道を始めたいという人やお子さんに習わせたいと思っている人へのアドバイスと、ご自身が始めた頃のことを教えてもらえますか。

 

私の場合は父が柔道をやっていたので、自分の意思とは関係なく始めた感じです。柔道は体操競技ではないですけど、前転、後転、受け身など、畳の上でゴロゴロして、最初はマット運動感覚で始められたと思っています。身のこなしという部分では、子どもの頃にアクティブに動いていて良かったなと思います。柔道は体が強くなりますし、1対1で戦うので気持ちもすごく強くなります。実は私は気持ちが弱い子だったんです。それで父は姉には勧めなかった柔道を私には習わせました。気持ちが弱いからちょっと鍛えたほうがいいと言って、私だけ柔道を始めることになったんです。

――子どもの習い事としては心身ともに強くなっていいですね。

 

最近の子どもたちは外で遊ぶ機会も場所も少なくなっていると思います。柔道は、室内ではありますけど、畳の上で走り回ったり、ゴロゴロ遊んだりということも大事なことです。最近は柔道教室をやっていても、前転や後転ができない子がすごく多いです。柔道を通して、体の動かし方、使い方を子どものうちから学べたらいいですよね。

――ご自身が柔道に取り組んできたなかで、やっていてよかったなと思うことはありますか。

 

転んだ時に受け身がとれる(笑)。転んだ時にとっさに頭を打たないようにしたり、自然と受け身をとっていたりして、「良かった」ということはあります。無意識に受け身をとっていた時は身についているんだなと思いました。他には、柔道は体同士がぶつかって、投げられたら痛いですし、そういうことも身をもってわかるのも大事かなと思います。痛さを知って成長できる部分もあると思います。

――柔道の競技普及の面で考えることはありますか。

 

私自身が柔道を何回もやめたいと思いながらもここまで続けてきて、やっぱり柔道が好きだなと思っています。サッカーや野球は公園でも遊びでできるけど、柔道は道場に行かないとできないという部分で、敷居が高く感じる人もいるはずです。それをもう少し「ちょっと柔道やってみようかな」くらいフランクにできるものにしていきたいなと考えています。

――多くの人に馴染みを持ってもらえるようにしたいですね。

 

まずは柔道を知ってもらって、柔道衣を着てもらうだけでもいいですし、柔道衣を着なくてもできることもあるので、体を強くするというところから柔道を知ってもらえたらと思います。

――「柔道を見る」という観点で、観戦してみたいなと思っている人へのアドバイスは?

 

ルールが難しいところもあるので、柔道界としては見せ方の工夫が必要ですよね。グランドスラム東京では映像で解説を流すなど工夫しているので、他の大会でもそういうものを増やしていけたらいいなと思います。まずは名前を知っている選手の応援からでも見てほしいです。

――YouTubeでの発信によって、角田選手をきっかけに柔道に興味を持つ人も増えたのではないですか?

 

オリンピックの後に10万人くらいYouTubeのチャンネル登録が増えましたし、コメントにも、「柔道は見たことがないけど初めて見に行ってみました」と書いてくれた方もいます。また、先日は試合会場で「柔道は全然知らないんですけど今日来てみました」と言ってくれる方もいました。どんなきっかけでもいいので、そうやって見てくれる人が増えるのは嬉しいですね。

――スポーツを知るきっかけとなるSPOPITAを使ってみてどんな印象を持ちましたか?

 

こうやって情報をまとめてくれているのはすごく使いやすいです。アスレチック系の運動ができるところないかな、と探すことがあるので、こういうサイトは助かります。学生時代の友達とちょっと柔道をしたいという時でも、なかなか場所が見つからないんです。でも、このSPOPITAを使えば探すのも簡単になりそうですね。

――最後にこれからの目標を教えてください。

 

今後の試合のことはまだ決まっていないのですが、オリンピックをきっかけにたくさんの方に知ってもらえて柔道にも興味を持ってもらえました。自分自身はこれからもずっと柔道に携わっていきたいので、自分に何ができるのか、いろいろ試しながら勉強していきたいなと思っています。

【プロフィール】

角田 夏実(つのだ なつみ)選手

1992年8月6日生まれ、千葉県出身。SBC湘南美容クリニック所属。巴投と関節技を武器にパリ2024オリンピック柔道女子48kg級で勝ち上がり、谷亮子以来20年ぶりの金メダルを獲得した。持ち前の明るい性格と旺盛な好奇心で、オリンピック後はさまざまなメディアやイベントで活躍を続ける。

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