日本でランニング人口が今のように爆発的に増えたのは、2007年に始まった東京マラソンがきっかけでした。東京の中心を、世界のトップアスリートだけでなく、数万人を超える一般ランナーが同時に駆け抜ける非日常的で祝祭的な光景には多くの人々が魅了され、それまで走ることに関心の薄かった層を突き動かしました。

一方、サウナの最初のブームは、1964年の東京オリンピック開催時、本場フィンランドのサウナが選手村に初めて設置されたことがきっかけだと言われています。その後、1990年以降のスーパー銭湯が人気を博した時期を経て、サウナを扱った漫画やドラマの大ヒットも契機とした、2019年前後からの第3次サウナブームへと続きます。

世代や性別を超えて利用者が増加したことに伴い、ソロサウナ、ホテルやキャンプとの融合など、利用場面や施設の形態なども多様化し、より「カルチャー」や「ライフスタイル」との結びつきが強くなったのが現在のブームの大きな特徴です。

一過性で終わるブームも多い中で、何年もの間、両者が継続して人を惹きつけてやまない背景には共通した理由があります。

一つは、ランニングもサウナもその楽しみ方に正解がないこと。

いつ走るか、いつサウナに行くか、どのくらいの距離走るか、どのくらいの時間サウナ室内にとどまり、水風呂や外気浴はどうするか。訪れる場所も含め、その日の気分や体調にあわせて、あらゆることを自分一人の都合や裁量で「自由」に決めて良い。何かと追われることが多い日々の中で、目標を持つ・持たないも含め、無理を強いない適度なユルさが、両者に共通した大きな魅力です。

次に、近年の健康志向とも合致した身体的な爽快感やプラスの効果が挙げられます。

ランニングをはじめとしたスポーツ・運動全般の効果は誰もが知るところですが、サウナの効果も近年の研究により徐々に証明され始めています。サウナで体が温まり、血管が拡がり、血行が促進される。筋肉に溜まった二酸化炭素や老廃物を排出する一方で、酸素と栄養素を豊富に含む血液が全身を循環する。加えて、水風呂及び外気浴をセットで繰り返すと、交感神経と副交感神経が交互に刺激されて自立神経が整い、ランニングによる筋肉・脳疲労から短時間でのリカバリーを促すこともできる。両者の組み合わせは、実際に相性が良いのです。

その他、メンタルなどに対する効果も見逃せません。ランニングとサウナはいずれも、ストレス解消、睡眠の質改善や集中力の向上など、副次的な効果も大いに期待できます。都会の喧騒や忙しない日々の中で疲弊したメンタルの改善効果は、都会を中心として今多くの世代から両者が求められている理由として大きいでしょう。

巷に溢れる情報やSNS上での他人の動向などに振り回され、時に自分を見失いがちな現代社会において、スマートフォンの中の世界から飛び出し、ランニングやサウナという身一つで可能な体験を通じて、思考から感覚の世界へと強制的に転換し、日頃の雑念からも解き放たれる・・・カラダとココロを同時に「ととのえる」意義はより一層高まっています。

幸い、東京都内は素晴らしいランニングコースと充実したサウナ施設、両方に恵まれています。楽しみながら、幸福感も得ることができ、カラダやココロにも良い。これほど至れり尽くせりであるにもかかわらず、手軽で安価なアクティビティは中々他にはありません。

ここで、筆者がオススメするランニングコースとサウナ施設の組み合わせを参考に紹介します。

ランニングステーションのシャワー利用も良いですが、ランニング後に少し足を延ばして近くのサウナ施設を利用してみることをぜひおススメします。自分のお気に入りのランニングコースからサウナ施設を探してみるでも、お気に入りのサウナ施設を目的地としたランニングコースを設定するでも、楽しみ方は人それぞれ自由です。

ランニングとサウナで得られる最終的な充実感や多幸感は、そこに至るまでの過程も含めて非常に似たものがあります。そのため、もし今どちらか片方だけにハマっている人がいれば、ぜひもう一方もトライしてみてください。きっと同じくらい熱中し、気がついた頃には都会でのライフスタイルに欠かせない一部となっていることでしょう。