体操競技の歴史は古く、オリンピックでは第１回の1896年アテネ大会から実施されています。1928年アムステルダム大会からは女子体操競技も行われ、女子のみの種目が加わったのは1952年大会からです。
かつては規定演技と自由演技の総合得点で競われていましたが、1996年アトランタ大会を最後に規定演技は廃止され、現在は自由演技のみで競技されています。
種目紹介
男子は6種目、女子は4種目から構成されています。
男子
ゆか
広さ12ｍ四方のゆかで、規定された技を組み合わせて演技し、技の完成度や着地の姿勢で得点を競います。
あん馬
高さ105cmの台の上で、2本の腕のみで体を支え、途中で静止せずに振動・回転する、男子のみの種目です。
つり輪
床面から280cmの高さの2本のつり輪を用いて、腕の力のみで体を支えて演技を行う男子のみの種目です。
跳馬
跳躍中の技の完成度と芸術性、跳躍時や着地の安定度で得点を競います。男子の器具の高さは135cmです。
平行棒
2mの高さに平行かつ水平に2本の棒を配置し、この棒間、棒上で多彩な演技を行う男子のみの種目です。
鉄棒
280cmの高さに設置された水平な鉄棒を使って、静止をせず、動きのある技を組み込む男子のみの種目です。
女子
跳馬
基本ルールは男女共に同じで、女子の器具の高さは、男子より10m低い125cmです。
段違い平行棒
高さの異なる2本の棒を並行に設置して実施される女子のみの種目で、多くの技があります。
平均台
幅10cm、長さ5m、高さ125cmの平均台で、リズムに緩急をつけて演技する女子のみの種目です。
ゆか
広さ12ｍ四方のゆかで、流れる伴奏に合わせる形で技を組み合わせて演技し、得点を競います。
競技ルールと用語
団体総合、個人総合、種目別のそれぞれの決勝進出をかけて予選が行われる。
各選手、各種目で行った1演技の得点によって予選を通過するかどうかが決められる（ただし、跳馬種目別の権利を得ようとする選手のみ、跳馬を予選で2演技行う）。
団体総合は1チーム4人が演技し、各種目の上位3人による総得点で争う。
個人総合はすべての種目（男子は6種目、女子は4種目）を1人の選手が演技して合計得点を競う。種目別では各種目の得点上位の選手が決勝で激突する。すべて予選の得点は加味されず、決勝での得点により順位が決められる。
体操競技は器械を用いて身体で演技を行い、技の難度や美しさ、安定性などを基準に審判員が判定を行い、得点を競う。それぞれの器具の特性を活かした演技で構成される。
男子
ゆか
- 競技方法
- 12ｍ四方のゆかの上で、徒手体操的な運動、平均技、静止技、力技、跳躍技、跳ね起き技、倒立回転技、宙返り技を組み合わせて演技する。規定時間の70秒間で演技しなければならず、時間超過は減点の対象となる。ラインからはみ出ると、ラインオーバーとなり減点となる。また、四隅に必ず一度は到達しなければいけない。
見どころ
強靭さ、柔軟さ、技のダイナミックさには目を見張ります。高いジャンプと美しい宙返り、きれいな着地、バランス維持の難しいポーズでの静止に注目しましょう。動きそのものが勝敗につながるため、演技時間は短くても、気を抜ける動きは一つもありません。
あん馬
- 競技方法
- 高さ105cm、長さ160cm、幅35cmの乗馬の鞍を模した台に、2本の把手（ポメル）がつけられた器具を用いて演技する。あん馬に手をかけ、飛び上がった時点から演技が開始され、振動技、移動技、旋回技、転向技を組み合わせて演技が構成される。あん馬から落下したり、演技を静止させたりとすると減点の対象となる。
見どころ
馬上で自身の身体を2本の腕のみで支持し、なおかつ止まることなく振動や回転を続けるので、非常に腕力を要します。地味に見えても、実は非常にハードでダイナミックな種目です。一連の技がいかにスムーズに大きく美しく行われているかが見せどころになります。
つり輪
- 競技方法
- 床面から280cmもの高さにロープやワイヤーなどで吊り下げられている2本のつり輪を使って演技を行う。技の種類には、懸垂振動技、振動倒立技、力技や静止技がある。懸垂振動技は体を振ったり回転したりする技で、静止は求められないが、その他の技はゆっくりとした回転や静止が求められ、腕力が要求される。また、2秒間静止しなければ静止とは認められず、減点の対象となってしまう。足以外での着地や2本のつり輪を交差させる行為、腕が曲がった状態での屈腕車輪は禁止されている。
見どころ
男子体操競技のなかで、最も腕力が要求される種目です。固定されていないつり輪で身体を支えるための絶妙なバランス力と、腕のみで身体を支える力強さが求められます。他の種目と違う特殊性の高い種目となっています。
跳馬
- 競技方法
- 助走を行い、跳馬の手前に置かれたロイター板で踏み切り、跳馬に手をついて跳び、着地するまでの間に技を繰り出す。跳馬の採点は踏み切ってから着地を完了するまでなので、助走中に一旦停止したり、躓いてバランスを崩したりしても、それ自体は減点対象とならない。着地エリアに2本のラインが引いてあり、そのラインの間に着地しなければ減点になる。故意に横向きに着地したり、着手せずに跳馬を飛び越えたりした場合は禁止行為に該当する。跳躍する前に自分が跳躍する技の番号を知らせておくというルールがあるが、申告した技と異なる技でも減点されることはない。
見どころ
演技の美しさ、突き放しの高さ、第二局面(馬体を突き離してから着地まで)の高さ、完成された着地が求められる種目です。技の流れも重要な要素です。力強さと豪快さを楽しみましょう。
平行棒
- 競技方法
- 2mの高さに水平かつ平行に配置した2本の棒を使って振動技や旋回技など、ダイナミックな演技を行う。流れのよい演技が評価される傾向にあり、難度表に記載されていない力技や静止技については禁止されていて、実施した場合は減点の対象となる。また、手や腕以外の部位で体の支持を行ってもいけない。
見どころ
片方の棒に両手でぶら下がるか、別々の棒に片手ずつをかけ棒の間にぶら下がるかは自由。非日常的なアクロバティックな技や、洗練された美しい動き、ダイナミックで多彩な技を見ることができます。
鉄棒
- 競技方法
- 高さ280cmのよくしなる鉄棒を使って実施される競技で、開始から終了まで停止することなく行わなければならない。懸垂や倒立位置で止まったりすることも認められず、減点となる。足でぶら下がるなど、手以外の部位で体の支持を行ってもいけない。演技中に落下してしまった場合や足以外での着地も減点となる。正面、逆面、背面による車輪や方向転換、両手を同時に離して再び棒を握るなどの手放し技があり、非常にダイナミックな演技が行われる。
見どころ
静止することなく、空中で鉄棒から手を離す「離れ技」や、順手や逆手または片手での逆手など、回転方向で非常に多くのバリエーションがある高速の大車輪など、大迫力の技が連続で繰り出される派手な競技で、「体操競技の華」と呼ばれます。個人・団体の両総合では鉄棒が最後の種目となるため、注目度が高い種目です。
女子
跳馬
- 競技方法
- 助走から跳馬の手前で踏み切りをし、跳馬に手をついて跳び、着地する。跳馬の採点は踏み切ってから着地するまでで、助走のやり直しは減点となる。他の体操競技と違い、1演技においてひとつの技しか実施できない特異な種目で、技の組み合わせで加点されることはないため、演技の価値点と実施点により採点が行われる。
見どころ
体操の種目のなかで唯一、一瞬で決まってしまう種目です。緊張感あふれる瞬間を見逃さないようにしましょう。
段違い平行棒
- 競技方法
- 170cmの低棒、250cmの高棒と、高さの異なる2本のバーを180cm間隔で並行に設置し、演技を行う。演技中に低棒と高棒の間を手放し技で移動しながら演技するのが特徴で、棒が1本の鉄棒種目に比べ、手放し技のバリエーションが非常に多い。
見どころ
男子種目の鉄棒に相当するとされ、女子4種目のうち最もダイナミックです。棒間の移動があるため、鉄棒にはない優雅さが演出されるのも魅力です。
平均台
- 競技方法
- 5mの台上を最大限に使用しながら、歩行、各種ステップ、跳躍、ターン、ポーズ、回転、宙返りなど、基本的なものから難易度の高いものまで、運動要素をむだなく組み合わせて演技を構成する。演技時間は90秒までとされている。
見どころ
演技が行われるのは幅10cmの狭い台上。そのため、身体調整力、平衡感覚はもちろん、安定したフォームと動きが求められます。
ゆか
- 競技方法
- 広さ12ｍ四方のゆかの上で、流れる音楽に合わせて、アクロバット系の技、ジャンプ、ターンなどのダンス系の技を組み合わせて演技する。四隅に必ず一度は到達しなければいけない。女子の演技時間は90秒までと決められていて、時間超過は減点の対象となる。
見どころ
演技の華やかさ、バランス、美しさやリズム感のよさに加えて、女子のゆか種目には伴奏に合わせた演技全体の演出性と表現力が求められます。
- 審査方法
- 体操競技の各種目には多くの技があり、それぞれの技や運動の難しさの程度は難度で表され、配点は難度により異なる。どの高難度の技を取り入れるか、さまざまな難度の技をどう組み合わせて構成し、安定した演技をするかに選手の技量やメンタルの強さが試され、得点に反映される。
