古代オリンピックで最初に行われた種目は、約192mの短距離走「スタディオン走」。この種目の勝者は紀元前776年から記録に残されています。古代オリンピックでは陸上競技のさまざまな種目が実施され、より距離の長いレースや武装競走の他、スタディオン走、走幅跳、円盤投、やり投、レスリングで構成される五種競技がありました。
複数の徒競走、跳躍、投てき、競歩、複合種目が1つの大会や試合で競われる現代の形式は、学校や軍学校が教育課程の一環としてスポーツを取り入れ始めた19世紀後半に発展。記録に残る最初の大会は1840年にイギリスのシュロップシャーで開催されています。
陸上競技に特化した大会は1880年代にアメリカやイギリス、ヨーロッパ各国や他の先進国で盛んに行われるようになりました。
オリンピックでは、1896年の第1回大会以降、実施されています。女性の参加は1928年のアムステルダム大会からで、5つのトラック競技、円盤投と走高跳が行われました。
種目紹介
陸上競技の種目には、トラック競技、フィールド競技、ロード(一般公道)で実施される競技があり、47種目に分けられています。
トラック競技は、短・中・長距離走、障害走、ハードル、リレーの合計25種目がオリンピックで行われます。
ロード(一般道路)で実施される種目にはマラソンと競歩があります。
トラックの内側や外側で行われるフィールド競技は、跳躍と投てきの2つに分けられます。
トラック競技
短距離走(男女100m・200m・400m走)
人類最速を決める100mではスタートの反応、200mではスプリント力とコーナリングの上手さ、400mでは瞬発力と持久力の両方が重要な要素です。
中距離走(男女800m・1500m)
最後までスタミナを維持する持久力に加えて、ラストスパートでは短距離選手に匹敵するスピードも求められます。
長距離走(男女5000m・10000m)
持久力の有無が勝敗を分けるため、エネルギー効率を考えた無駄のない走りに加え、戦略や駆け引きが必要となります。
障害走(男女3000m障害)
トラック1周に5か所設置された障害物を越え、記録と順位を競います。障害物を28回、水濠を7回飛び越えなければならない過酷な種目です。
ハードル(女子100m・男子110m・男女400m)
コース上に置かれた10台のハードルを跳び越えながら走り、タイムを競います。故意でなければハードルを倒しても失格にはなりません。
リレー(男女4×100m・4×400m・男女混合4×400m)
4人の選手がスタートからフィニッシュまで1本のバトンをつないで走る競技です。単に個々の走力だけでは勝負の行方がわからず、スムーズなバトンワークが勝負のカギとなります。
フィールド競技 - 跳躍
走高跳
助走をつけて片足で踏み切り、跳び越えるバーの高さを競います。
棒高跳
助走の勢いで曲げたポール(棒)の反発力を利用してバーを跳び越え、その高さを競います。
走幅跳
助走をつけて前方へ跳ぶ距離を競います。
三段跳
助走をつけてホップ・ステップ・ジャンプと3回跳び、その距離を競います。
フィールド競技 - 投てき
砲丸投
直径2.135mのサークル内で金属(鉄など)の球を投げ、その距離を競います。
円盤投
直径2.5mのサークル内で選手が回転し、遠心力を利用して円盤を投げ、その距離を競います。
ハンマー投
直径2.135mのサークル内でハンマーを投げ、その距離を競います。
やり投
投てきのなかで唯一、助走をつけて投げ、その距離を競います。
競技ルールと用語
より速く、高く、遠くという運動の基本が陸上競技。ここでは、フィールド競技を中心に競技ルールを紹介する。
フィールド競技はトラック競技のように何人もの選手が同時に競うことはなく、1人ずつ試技を行い、その記録で順位が決まる。
投てき種目はすべて予選通過標準記録に達した選手が決勝に進む。決勝では3回の試技で上位8番目までの記録の選手が残り、さらに3回の試技を行い、合計6回の試技の最高記録によって順位が決まる。
走高跳
- 競技方法
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はさみ跳び、ベリーロールなどさまざまなスタイルで行われてきたが、現在の主流は背面跳び。跳び始めの高さは選手が決めることができる。同じ高さには最大3回挑戦でき、その高さで成功しないままパスして次の高さに挑むこともできる。パスを除いて3回続けて失敗すると敗退となり、最後に成功した高さが記録となる。
助走のスピード、踏み切るタイミング、きれいな空中姿勢が好記録を生むポイント。両足で踏み切ってはいけない。男子は2m40台、女子は2m前後の戦いが繰り広げられる。
- 審査方法
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最も高く跳んだ選手が優勝だが、同条件が複数いた場合は、その高さの失敗が少ない選手が上位になる。それでも決まらない場合は、全体の試技で失敗の少ない選手が勝者となるか同順位となる。優勝決定戦を行うこともできる。
見どころ
自分の身長より上の高さを舞うように跳び越える流れるようなフォームと美しい動作が魅力です。
棒高跳
- 競技方法
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トップクラスの選手はパスをして体力を温存し、より高いバーにチャレンジすることがあるが、最初の高さで3回続けて失敗すると記録が残らない。助走路の長さは40〜45m。
棒高跳の棒は表面が滑らかであれば材質や長さ、太さ、重さに決まりがなく、各選手は自身の身長や体重、筋力などに合わせてオリジナルのものを使用できる。かつては木製や竹製のポールが使われていたが、現在はグラスファイバー製やガラス繊維、炭素繊維を用いた強化プラスチック製のポールが使用されている。
男子選手が使うポールの長さは約5mで、レベルの高い選手ほど長く硬いポールを使う傾向がある。
- 審査方法
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順位の決め方は、走高跳と一緒。ポールがバーを落とすと無効試技となるため、跳び越えたときポールをいかに上手に助走路側に押し戻すかも大事な技術となる。
見どころ
リスクをかけてチャレンジするか、体力を消耗しながらも確実に記録を残すか、各選手の戦略に注目です。
走幅跳
- 競技方法
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空中で脚を回転させるはさみ跳びか、空中で体を大きくそらせてから前へかがむそり跳びが多くみられる。砂場に残された痕跡の踏切板に最も近い場所から踏切線まで直角に測った距離が記録となる。手などを後ろにつくと、そこが記録になる。
助走スピードが跳躍距離に影響するため、短距離のトップ選手が走幅跳で活躍するケースも多くある。
- 審査方法
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決勝ではすべての選手は3回の試技ができ、さらに上位8名はもう3回の試技が許される。最も遠くまで跳んだ選手が優勝。同記録だった場合には、2番目によい記録、3番目、4番目というように比較して上位者を決める。選手の跳躍順番は4回目以降、変更になり、最終跳躍者は3回目までに最もよい記録の選手となる。
踏切板を踏み越した場合には赤旗が上がってファウルになり、3回のファウルで記録なしになる。選手は砂場を逆に戻ってはならず、審判員は踏み切りだけでなく砂場を出る動作まで確認して白旗を挙げる。
見どころ
可能な限り前方で踏み切ると記録が伸びるが、ファウルを怖がって踏切板ばかり気にしていると大きなジャンプができません。そうした選手の葛藤が見ものです。長さ40〜45mの助走路を走る際、自分を盛り上げて集中するために、観客に手拍子を要求する選手のパフォーマンスにも注目です。
三段跳
- 競技方法
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選手はホップで踏み切ったのと同じ足で最初に着地し、ステップでは反対の足で着地し、つづいてジャンプを行う。つまり、1歩目と2歩目を同じ側の足で踏み切り、最後のジャンプを反対側の足で踏み切る(右・右・左か左・左・右)。
- 審査方法
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順位の決め方や跳躍順などのルールは走幅跳と同じで、3回あるいは6回の試技で最も遠くまで跳んだ選手が優勝。
踏切板の先には、走幅跳と同じく、つま先が踏みでたかどうかの判定をしやすくする目的で、45度の角度の粘土層が塗りつけられていて、無効試技のたびに審判員が粘土板を交換する。
見どころ
3回のジャンプをスムーズに行う調整力など、競技テクニックが必要なため、経験豊富なベテラン勢も多く活躍しています。
砲丸投
- 競技方法
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選手が肩を痛めないようにとの配慮から、片手で押し出すように投げなくてはならない。野球のピッチャーのようなオーバーハンドで投げる行為はファウルになる。両肩を結ぶ線より後ろや下に持っていくと無効。金属製(鉄など)の砲丸の重さは男子7.26kg、女子4kg。
グライド投法(オブライエン投法)は後ろ向きの構えからステップして身体のひねりを利用して押し出す投げ方で、回転投法は回転して遠心力で投げる投法。
見どころ
重い金属球を20m以上飛ばすダイナミックな投てきは迫力があります。
円盤投
- 競技方法
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距離を伸ばすためには筋力だけでなく、回転エネルギーを円盤が前方に飛び出すための力に変えるためのテクニックが重要。選手が風の向きや強さを知ることができるように吹き流しが用意されている。円盤の重さは男子2kg、女子1kg。円盤は本体(金属や木製など)と縁枠(金属)からできている。
見どころ
向かい風の方が記録が出るといわれる競技のため、風をつかむタイミングもポイントとなります。
ハンマー投
- 競技方法
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選手はサークル内で3〜4回転し、遠心力を利用して遠くに投げる。
ハンマーの重さは男子7.26kg、女子4kg。砲丸投の砲丸と同じ重量。ハンマーは金属製の頭部(ヘッド)、接続線(ワイヤー)、ハンドル(グリップ)の3つの部分から構成されている。
ヘッドからハンドル内側までのワイヤーの長さが長ければ長いほどより遠くに飛ぶはずなので、全体の最長は男子121.5cm、女子119.5cmと規定されている。
見どころ
雄叫びとともに重いハンマーを80mも飛ばす選手の気迫に満ちた投てきには凄みがあります。
やり投
- 競技方法
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回転投法は認められていない。助走路は幅4m、距離は国内で最短30m、国際大会では33m50以上が必要。男子は90m台、女子は70m台の勝負となる。
やりの重さは男子800g、女子600g。長さは男子2.6〜2.7m、女子2.2〜2.3m。選手が同じ条件で記録を競うことができるように、長さに加え、重心の位置や柄の直径など細かい規定がある。
見どころ
まっすぐ走り、まっすぐ投げるという、他の投てき種目にはない直線的なスピード感が魅力です。