ゴールボールは、視覚障がい者が男女別に行う対戦型チームスポーツです。第二次世界大戦で視覚に傷害を受けた軍人のリハビリテーションプログラムとして考案され、1946年に競技種目として紹介されたのが始まりとされています。
1994年5月に日本ゴールボール協会が発足しています。
パラリンピックでは、1972年のハイデルベルグ大会で公開競技に、1976年のトロント大会では正式採用されました。
競技ルールと用語
6人制バレーボールのコートと同じ18×9mのコートを使用し、攻撃側はバスケットボールとほぼ同じサイズの鈴入りボール(重さ1.25㎏)を相手ゴール(高さ1.3×幅9m)に向かって投球し、守備側は全身を使ってボールをセービングする。試合時間は前後半12分(ハーフタイム3分)。
- 競技方法
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アイシェード(目隠し)を着用した1チーム3人(ベンチ最大3人)のプレーヤー同士が、ボールから鳴る鈴の音や相手選手の足音、動く際に生じる床のわずかな振動などを頼りに、攻撃と守備を入れ替えて得点を競う。
攻撃側は、1人がコート内でボールを転がすように投球し、相手ゴールを狙う。守備側は3人で、鈴の音を頼りに全身を使ってゴールを守る。一定時間内の得点の多いチームが勝ちとなる。- パス
- お互いの位置を確認して床に転がしてパスをする。鈴の音でボールの位置が相手にバレないように手渡しでパスをする戦術もある。
- ライン
- コート内のラインには床との間に3㎜以下の糸を通して、その上からテープが貼られているため、選手はこの凸凹を手や足で触って自分の位置を確認する。
- ポジションと役割
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- センター
- 最もボールが飛んでくる守備の要。センターから両ウィングへボールを素早く展開し、攻撃につなげる。
- ウィング
- ライトとレフトに分かれ、相手に狙われやすいライン際とセンターを抜けてきたボールを確実に止めることが求められる。攻撃的なプレーヤーとして、速攻や移動攻撃、ウィング同士の連携プレーなど多様な攻撃を行う。
- 得点方法
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1ゴールを1点とし、より多く得点したチームが勝ち。同点の場合は3分ハーフのゴールデンゴール方式(どちらかが先に得点した時点で終了)の延長戦。
それでも勝敗が決しない場合は「エクストラスロー」と呼ばれる、サッカーのPKのような1対1の勝負により勝者を決定する。
- 反則
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ゴールボールでは攻撃時に投げた(転がした)ボールが、自陣のオリエンテーションまたはランディングエリア(チームエリア)とニュートラルエリアの両方でバウンドしなければ反則となる。
- ハイボール
- 攻撃側のチームエリアに触れずに守備側へ投球された場合。
- ロングボール
- 投球されたボールが、攻撃側のチームエリアに触れた後、ニュートラルエリアに触れなかった場合。
- ショートボール
- 投球されたボールが、相手側のチームエリアに届かなかった場合。
- アイシェードタッチ
- ゲーム中、選手がレフェリーの許可なくアイシェードに触れた場合。
- 10セカンズ
- 防御側がボールに触れてから投げ返したボールが10秒以内にセンターラインを越えなかった場合。
- ノイズ
- 攻撃側のチームが投球する際、守備側に不利になるような音を出したと見なされた場合。
- イリーガルコーチング
- オフィシャルブレイク中(ゲームタイマーが止まっている間)以外に、ベンチにいるコーチ等がコート内の選手に指示すること。※反則を犯したときはペナルティスローとなり、一人で幅9mを守らなければならない。
- 用具
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- ボールバスケットボール(7号球)とほぼ同じ大きさ。重さは1.25kgで、バスケットボールのほぼ2倍。中には鈴が2つ入っている。鈴がつぶれて音が悪くなるため、パラリンピックでは2~3試合しか同じボールは使用されない。
- アイシェード光を完全に遮断したゴールボール専用のゴーグル。障がいの程度(視力や視野)によって競技力の差が出ないように選手全員が目隠しをつける。試合のときはアイパッチと呼ばれるガーゼで目を隠した上から着用する。
見どころ
聴覚によってボールや相手の動きを確認し、声でチーム内の連携を図ります。攻撃と守備の駆け引きにも注目です。例えば、攻撃側は複数の足音でフェイントをかけたり、途中でコースが変わるようボールに回転を加えます。また、守備側は相手のノイズに惑わされず、コースを正確に把握します。
男子のトップ選手では時速60~70kmにもなるボールを全身で止めてゴールを阻止するゴールボールは、全身にボクシングのパンチを受けることにも似ていることから「静寂のなかの格闘技」ともいわれる迫力あふれる激しい競技です。