ショートトラックスピードスケートは、1905〜1906年頃カナダとアメリカで始まり、楕円形のトラックでマススタート(集団スタート)の大会が開催されていました。1967年、国際スケート連盟(ISU)がショートトラックスピードスケートを正式種目としましたが、1976年まで世界的な国際大会は開催されませんでした。
冬季オリンピックでは、1988年のカルガリー大会で公開競技として行われた後、1992年のアルベールビル大会から正式種目として採用され、個人種目とリレー種目が男女ともに行われています。
種目紹介
個人種目の短距離走(男女500m・1000m)・中距離走(男女1500m)、リレー種目の男子5000m・女子3000m・男女混合2000mなどの種目があります。各ヒート(予選)で、上位2選手(チーム)が次のラウンドへ進出し、最終的にメダルをかけて競います。
個人種目(500〜1500m)
オリンピックでのレースは原則として、500m及び1000mでは4人が同時にスタートし、各組上位2人が準々決勝及び準決勝へ進出、1500mでは6人が同時にスタートし、上位3人が準決勝へ進出します。準決勝では上位2人がA決勝へ進み、その次の2人がB決勝へ進む勝ち抜き方法で行われます。
リレー種目
1チーム4人が出場し、タッチ(引継ぎ)をして1人ずつ滑ります。タッチの回数やタイミングは自由ですが、最後の2周は「アンカー」として1人が滑りきらなければなりません。
男女混合2000m
2022年北京大会から実施された種目で、出場するスケーターは、個人種目、男子あるいは女子のリレー種目でオリンピック出場権を獲得している選手に限られ、1チームは男女各2人の計4人で構成されます。距離は2000mで、滑走順は女子、女子、男子、男子、女子、女子、男子、男子です。


競技ルールと用語

- 競技方法
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ショートトラックはフィギュアスケートと同じリンク(60×30m)で行われる競技で、1周111.12mのトラックを複数の選手が集団で同時に滑走する。目まぐるしく順位が入れ替わったり、コースの奪い合いで選手同士が接触したり、とてもスリリングな競技。
着順で順位が決まるため、タイムよりもスタート位置や走行中のポジションが重要になる。どのタイミングで仕掛けるか、前に出るかといった駆け引きや戦略、勇敢さ、スキルが求められる。レース中の追い越しはいつでもどこでも可能だが、前の選手を押す、あるいは引っ張るなどの妨害行為をすると失格になり、次のラウンドには進めない(原則的には追い抜く側に責任がある)。フィニッシュはスリットカメラでブレードの先端を1000分の1秒まで計測するため、最後の粘りが雌雄を決する。
抜きつ抜かれつのレースでは接触、衝突、転倒する危険性が高いため、危険防止のため選手の安全防具(ヘルメット、手袋、ひざ当て、ネックプロテクター、カットレジスタンス素材による重要部位防護など)の着用が規則で義務付けられていて、不備があると失格となる。コースの壁には衝撃吸収用のパッドが内蔵されている。
- 用具
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- スケート靴コーナー部でのターンが多く、軌道のコントロール維持のため、アスリートは固い靴を必要とする。このため、素材はスピードスケートの靴よりも硬質である。
ショートトラックのブレードの平均的な長さは30〜45cm。 - ヘルメット競技中の転倒や相手選手との万が一の衝突に備えた強度を持ちながら、パフォーマンスへの影響を極力なくすように軽さも追求されている。突起しているヘルメットは着用できない。
- 手袋相手選手との接触等による怪我を防止する。また、氷に左手を付きながらコーナーを回る際に、手袋が摩滅するのを防ぐため、指先にフィンガーチップと呼ばれるものが付いている。
- ひざ当て転倒や衝突時に、相手選手のブレード(刃)との接触による怪我のリスクを減らす目的で装着する。
- ネックプロテクター通気性に優れているうえ、相手選手のブレード(刃)などが当たっても切れにくい素材で作られている。
- スケート靴コーナー部でのターンが多く、軌道のコントロール維持のため、アスリートは固い靴を必要とする。このため、素材はスピードスケートの靴よりも硬質である。
見どころ
複数の選手が密集して滑走するので接触や転倒が多く、フィニッシュラインを通過するまで順位が予測不能です。滑走中の接触を避けて先頭を走り続けるか、体力温存のために後方ポジションで追いかけながら、後半に勝負を仕掛けるかなど、戦略が重要。アスリート同士の駆け引きが常に行われ、抜きつ抜かれつの油断できないレース展開はスリル満点です。
トラックのコーナーが小さいため、体を大きく傾けて氷に左手をつきながらスピードを落とさずに滑らかに曲がる技術やダイナミックさもショートトラックならではの見どころです。